(2026年1月14日 連載3日目)
この連載は、私が「正解」を教えるものではなく、 私の学びを皆さんと一緒に、共有し考えていく場にしたいと思っています。
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今日は、本能が「少ない子に集中投資する」方向に切り替わったとき、 現代の日本でそれが極端に進みすぎるとどうなるか、 を一緒に考えてみましょう。
生物学で言うK-選択戦略は、 安定した環境で「質を重視する」生き方です。 子どもをたくさん産むのではなく、 一人ひとりに多くの時間・愛情・教育・お金を注いで、 確実に強く育てようとする戦略です。
これ自体は、とても賢い判断です。 昔の厳しい時代から見れば、 「生き残る確率を最大にするための最適解」だったわけですから。
でも、現代の日本では、このK-選択戦略が極端に進みすぎているように見えます。
たとえば、
- 子どもの教育費が平均で1人あたり1,000万円以上(大学まで含むと2,000万円超も珍しくない)
- 共働きなのに長時間労働で子育て時間が取れない
- 住宅ローンや将来の年金不安で「子ども1人でも精一杯」
- 結果として「子どもを持たない」「持てない」選択が増える
これが積み重なると、 **「質を重視しすぎて、量が極端に減ってしまう」**という状態になります。 本能は「少ない子でいい」と正しく判断しているのに、 その「少ない」が「ゼロ」に近づいてしまう。
これこそが、進化の罠の核心です。 本能は間違っていない。 むしろ、昔から勝ち残ってきた「優位な戦略」だからこそ、 現代の超安定環境で極端に振り切れてしまう。 その結果、出生率が1.2前後という、 長期的に人口が持続不可能なレベルにまで落ち込んでしまうのです。
私自身、このことを考えると、 「本能は正しいのに、なぜこんなに切ない結果になるんだろう」 と、胸が締め付けられるような気持ちになります。
子どもを持つことを夢見てきた世代として、 「産みたいのに、なかなか踏み出せない」 「産むのが怖い、負担が大きすぎて」 という気持ちを抱えている人がいる一方で、 「最初から結婚も出産もしたくない」「子どもはいらない」と はっきり選んでいる人も増えています。 どちらの思いも、今の私たちの暮らしの中で、 とても自然に生まれてきているように感じます。
この連載では、 そんな複雑で多様な思いを否定せずに、 歴史や世界の例を見ながら、 一緒に、少しずつ向き合っていきたいと思います。
明日(Day 4)は、 「父性本能の条件付き投資と現代の経済不安」 についてです。
中村知也 2026年1月14日
#進化の罠連載 #少子化を一緒に考える
(参考:教育費データは文部科学省・日本政策金融公庫「令和5年度教育費負担の実態調査」等に基づく概算値。K-選択戦略の極端化は生命史理論の現代適用例として一般的な解釈を簡易的にまとめています)
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