(2026年1月18日 連載7日目)
この連載は、私が「正解」を教えるものではなく、
私の学びを皆さんと一緒に、共有し考えていく場にしたいと思っています。
これまで、江戸時代の安定と明治の急増を通じて、
本能と理性が時代ごとにどう均衡を取ってきたのかを振り返ってきました。
今日は、さらに時間を進めて、戦後ベビーブームの時代に目を向け、
繁栄の爆発が本能と理性にどんな影響を与えたのかを、一緒に考えてみましょう。
第二次世界大戦の終結(1945年)後、日本は焼け野原からの復興を始めました。
戦争の時代がようやく終わったという安堵と、兵役からの帰還や家族の再会が相次ぎ、
1947〜1949年の3年間で、出生数はそれぞれ約270万人前後と、
戦前のピークを上回る「第1次ベビーブーム」が起こりました。
合計特殊出生率(TFR)は最高で4.5を超え、一時的に4.0以上を維持し、
人口は急激に増加していきました(厚生労働省人口動態統計に基づく)。
この爆発的な出生増加は、なぜ起きたのでしょうか。
戦後の日本では、
- 食料・医療の供給が急速に回復し、乳幼児死亡率が急低下
- 戦争の終結による復興の希望と、家族の再会・生活基盤の安定
- 「子どもは宝」「家族を増やすことが復興の象徴」という社会的な空気が広がった
こうした環境で、本能は「子どもが生き残りやすくなった」シグナルを強く受け取り、
繁殖意欲が一気に高まったように思われます。
同時に、理性は「今なら子どもを育てられる」という安心感を受け、
戦争の時代が終わったという解放感と復興への希望が、
父性・母性の絆を「戦後の未来を子どもたちに託す」という強い思いで結びつけ、
家族単位での愛情投資が爆発的に増えたのではないでしょうか。
この時期は、本能の「産む力」が最大限に発揮され、理性がそれを支えた瞬間だったのかもしれません。
戦前戦中の厳しさから解放され、復興と希望のムードが、
本能と理性のスイッチを全開にしたように感じます。
しかし、このベビーブームは長続きしませんでした。
1950年代後半になると、出生数は急減し始めます。
以下に、戦後第1次ベビーブーム期から1970年代の第2次ベビーブーム(回復期)までのTFR推移を簡易的にまとめました(厚生労働省・国立社会保障・人口問題研究所の歴史データに基づく)。
| 年次 | 合計特殊出生率 (TFR) | 傾向のポイント |
|---|---|---|
| 1947年 | 約4.5 | 第1次ベビーブーム最高値 |
| 1948-1949年 | 約4.0以上 | 高水準維持 |
| 1950年代前半 | 約3.0〜4.0 | 急激に減少開始 |
| 1950年代後半 | 約2.2〜2.5 | さらに低下 |
| 1960年代前半 | 約2.0前後 | 人口置換水準近辺で推移 |
| 1966年 | 約1.58 | 丙午(ひのえうま)の特異的低下 |
| 1971-1974年 | 約2.1〜2.2 | 第2次ベビーブーム(微回復) |
1960年代にはTFRが2.0を下回る方向へ移行し始めましたが、1970年代に入り一時的に回復(第2次ベビーブーム)したものの、
経済成長とともに、
- 都市化・核家族化
- 女性の社会進出
- 教育投資の増加(子ども一人ひとりにかける費用が急上昇)
といった変化が、
本能を「質重視(K-選択戦略)」へさらに強くシフトさせ、
理性による抑制が優勢になった結果ではないでしょうか。
戦後の繁栄は、
一時的に本能を活性化させましたが、
その繁栄自体が、
次の段階で理性の抑制力を強める方向へ導いたように見えます。
私自身、この歴史を振り返ると、
「繁栄は本能を活性化させる一方で、同時に理性による抑制の力も生み出しているんだな」
と、改めて思います。
戦後ベビーブームの爆発は、
本能と理性が「生き残るための最善」を探っていた結果のように感じます。
でも、今の私たちは、
その爆発の後の「抑制」の段階に長く留まり、
減少の道を歩んでいる。
この違いは、どこにあるのでしょうか。
現代の社会システムが、本能と理性のバランスをどう狂わせているのか、
江戸・明治・戦後と比べながら、少しずつ考えていきたいと思います。
この連載では、
そんな歴史の流れを眺めながら、
今の私たちの思いと照らし合わせて、
一緒に、少しずつ考えていきたいと思います。
明日(Day 8)は、
「経済成長期〜バブル崩壊後の質投資シフト」
についてお話しします。
今日も、少しでも心に響くところがありましたら、
ぜひご自身の思いを振り返ってみてくださいね。
中村知也
2026年1月18日 朝
進化の罠連載 #少子化を一緒に考える #戦後ベビーブーム #本能と理性
(参考:
戦後ベビーブームの出生数・TFRは厚生労働省「人口動態統計」歴史データに基づく。
乳幼児死亡率低下・経済復興の影響は総務省統計局・日本経済史の標準的記述を簡易的にまとめています。)

