Day 5 / 母性本能の無条件絆が今なぜ負担に?

少子化考察

(2026年1月16日 連載5日目)

この連載は、私が「正解」を教えるものではなく、 私の学びを皆さんと一緒に、共有し考えていく場にしたいと思っています。

これまで父性本能の「条件付きの絆」についてお話ししてきましたが、 今日はその対になる母性本能に焦点を当てて、一緒に考えてみましょう。

人間の母性本能は、進化の過程で**「無条件の絆」として強く形作られたように思われます。 女性は妊娠・出産・授乳という明らかな生理的つながりを持つため、 子どもの親であることが100%確実です。 そのため、母性本能は「どんな状況でも、子どもを守り、愛情を注ぎ続ける」**という形で進化したと考えられるかもしれません。

これは、進化生物学で言う「包括適応度」の一側面として、 **「自分の遺伝子を確実に残す」**ための自然なメカニズムです。 ここでは「お金や資源の計算」というイメージではなく、 **「無条件に愛情を注ぎ、絆を育む心の力」**を意味しているように感じます。 昔の時代では、この無条件の絆が、厳しい環境の中でも子どもの生存率を高め、 人類の存続を支えてきたのではないかと思います。

でも、今はどうでしょうか。 現代の日本では、この母性本能の「無条件」が、かえって大きな負担に変わってきているように見えます。

たとえば、

  • 共働きが当たり前なのに、長時間労働で子どもと過ごす時間が取れない
  • 子どもの教育費・習い事・将来の費用が膨らみ、「1人でも精一杯」
  • 住宅ローンや年金不安で、「子どもに心から向き合える自信」が持てない
  • 核家族化・孤立が進み、昔のように周囲のサポートが得にくい

これらが重なると、 母性本能は「子どもを愛し続ける」という純粋な力を持ちながら、 現実の負担が大きすぎて「踏み出せない」「続けられない」感覚を生み出します。

なぜそうなるのか? それは、母性本能の「無条件」という強さが、 今の社会環境で逆にプレッシャーになるからではないでしょうか。 本能は「どんな状況でも絆を育む」と駆り立てるのに、 環境がそれを支えきれていない。 たとえば、長時間労働や経済不安が、 「愛情を注ぎたいのに、時間やお金が追いつかない」 というギャップを生み、心の負担を増大させてしまうように感じます。

本能は間違っていないんです。 むしろ、なぜ本能は正しいのに負担になるのか? それは、進化的に見て優れた「心の力」が、 今の社会環境に合わなくなってきているだけではないでしょうか。 また、今の社会システム自体、 長時間労働や格差、孤立を助長する仕組みが、 本能の純粋な絆を邪魔しているのかもしれません。 私自身、そんな疑問を抱きながら、この問題を考えています。

一方で、子どもを望まない選択をする人も増えていて、 どちらの思いも、今の社会の中で自然に生まれてきているように感じます。

この連載では、 そんな複雑で多様な思いを否定せずに、 歴史や世界の例を見ながら、 一緒に、少しずつ向き合っていきたいと思います。

明日(Day 6)は、 「江戸時代〜明治の人口変動と本能の均衡」 についてです。

今日も、少しでも心に響くところがありましたら、 ぜひご自身の思いを振り返ってみてくださいね。

中村知也 2026年1月16日

#進化の罠連載 #少子化を一緒に考える

(参考:母性本能の無条件絆は進化生物学の親族選択・包括適応度理論に基づく一般的な解釈を簡易的にまとめています。共働き率・長時間労働のデータは総務省労働力調査2025年最新値に基づく)

Day 4はこちら」「Day 6へ続く」

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