Day 4 / 父性本能の条件付き投資と現代の経済不安

少子化考察

(2026年1月15日 連載4日目)

この連載は、私が「正解」を教えるものではなく、 私の学びを皆さんと一緒に、共有し考えていく場にしたいと思っています。

これまでの3日間で、 「本能は優位で正しい戦略だった」「現代の安定環境で本能が切り替わる」「その切り替えが極端になると少子化につながる」 という流れをお話ししてきました。今日は、「父性ってどうなの?」「男性側の気持ちも知りたい」という疑問、父性本能に焦点を当てて、一緒に考えてみましょう。

人間の父性本能は、進化の過程で**「条件付きの絆」として形作られたように思われます。 生物学的に言うと、女性は妊娠・出産という明らかなつながりを持つので、 子どもの親であることが確実です。 一方、男性は「自分の子どもかどうか」が確実ではないため、 父性本能は「確信度が高い場合に、心の絆を深め、愛情を注ごう」**という形で進化したと考えられるかもしれません。

これは、Hamiltonの包括適応度理論という考え方で、 「自分の遺伝子を確実に残す」ための自然なメカニズムです。 ここでは「お金や資源の投資」という冷たいイメージではなく、 **「愛情を注ぎ、絆を育む心の力」**を意味しているように感じます。 昔の時代では、結婚・家族の絆が強く、 父性確信が高かったので、男性は「子どもを守り、育て、継がせる」ことに大きな愛情を捧げてきたのではないでしょうか。

でも、今はどうでしょうか。 現代の日本では、以下のことが父性本能の「条件」を厳しくしているように見えます。

  • 経済的不安:非正規雇用が増え、収入が不安定。 「子どもを養える自信がない」→愛情を注ぐのをためらう
  • 晩婚化・非婚化:結婚自体が遅れる・しない人が増え、 「子どもを持つ前提」が薄れる
  • 離婚率の上昇:離婚後の養育費負担や親権問題で、 「確信度」がさらに下がる感覚
  • 長時間労働文化:仕事に追われて、 「子どもに時間と愛情を注ぐ」ことが物理的に難しい

これらが重なると、 父性本能は「今は絆を深めない方が安全」と判断しやすくなるのかもしれません。 本能は間違っていないんです。 むしろ、**「心の絆を確実に残す」**という古いプログラムが、 今の不安定な環境に適応しようとしているだけではないでしょうか。

私自身、子供を持つのが遅かったですし、父親として子育てを経験しながら、 「子どもを持つ自信が持てない男性の気持ち」が、 痛いほどわかる気がします。 一方で、子どもを望まない選択をする人も増えていて、 どちらの思いも、今の社会の中で自然に生まれてきているように感じます。

この連載では、 そんな複雑で多様な思いを否定せずに、 歴史や世界の例を見ながら、 一緒に、少しずつ向き合っていきたいと思います。

明日(Day 5)は、 「母性本能の無条件絆が今なぜ負担に?」 についてお話しします。

中村知也 2026年1月15日

#進化の罠連載 #少子化を一緒に考える

(参考:Hamiltonの包括適応度理論は進化生物学の基本概念で、父性確信の条件付き絆は一般的な解釈を簡易的にまとめています。非正規雇用率は総務省労働力調査2025年最新値に基づく)

Day 3はこちら」「Day 5へ続く」

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