(2026年1月13日 連載2日目)
昨日は、少子化の根本に「本能と現代環境のミスマッチ」があるというお話をしました。
今日はその「本能」の部分を、もう少し身近に感じられるようにお話ししたいと思います。
私たちの体と心に刻まれている本能は、
何百万年も前の「狩猟採集時代」に作られたものです。
あの頃の人間にとって、子どもが生き残る確率はとても低かったです。
病気、飢え、猛獣、事故……
子どもが5歳まで生き残る確率は、半分以下だったと言われています。
「狩猟採集時代」の本能はこう判断しました。
「子どもをたくさん産んで、少しでも生き残る子を残そう」
現代人である私達は本能を野蛮視される事が多いように感じますが、この点では、実は非常に優れていて、優位だったからこそ、私たちの祖先が生き残り、今の私たちが存在しています。 もし本能が「少ない子でいい」と判断していたら、厳しい環境で人類は絶滅していた可能性が高い。 つまり、この「たくさん産む」本能は、**進化的に見て「勝ち残った正しい戦略」**です。
でも、今はどうでしょうか。
日本では、子どもが病気で亡くなる確率は極めて低い(乳児死亡率約2/1000、厚生労働省人口動態統計2024年)。
食べ物はいつでも手に入り、医療は世界一レベル。
子どもはほぼ確実に育つ時代になりました。
すると、本能は自然にこう切り替わるんです。
「もうたくさん産む必要はない。
少ない子に、しっかり愛情と時間とお金を注ごう」
生物学では、これをK-選択戦略(K-strategy)と呼ぶそうです。
簡単に言うと、
- r-選択戦略:たくさん産んで、生き残る子に賭ける(不安定な環境で有利)
- K-選択戦略:少ない子を丁寧に育てて、確実に生き残らせる(安定した環境で有利)
(参考:生命史理論の基本概念。詳しくはWikipedia「r-K戦略説」などで確認できますが、専門用語はここまでで十分です)
この切り替え自体は、とても理にかなっていると思います。
誰も間違っているわけじゃない。
むしろ、本能は「正しく」働いているんです。
なのに、その「正しい判断」が積み重なると、
今のような出生率1.2前後という状況が生まれてしまう。
これが、昨日お話しした「進化の罠」「滅びの道」のメカニズムです。
私自身、このギャップを考えると、
「昔の本能が、今の私たちに合わなくなっているのかな……」
と、なんだか切なくなります。
子どもを持つことを夢見てきた世代として、
「産みたいのに、産むのが怖い」
「負担が大きすぎて、踏み出せない」
という気持ちを抱えている人が、どれだけいることでしょう。
この連載では、
そんな複雑な思いを否定せずに、
歴史や世界の例を見ながら、
一緒に、少しずつ向き合っていきたいと思います。
明日(Day 3)は、
「K-選択戦略が極端になると、どうなるのか?」について
中村知也
2026年1月13日

